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2017 Nov. 14

写真展あれこれ

今年の9月、「CHANEL/シャネル」銀座ビルディング4階の「シャネル・ネクサス・ホール」では、レイモン・ドゥパルドンの写真展「DEPARDON/TOKYO 1964-2016」が開催された。

DEPARDON/TOKYO 1964-2016

報道分野において数多くの作品を残しているフランス出身の写真家レイモン・ドゥパルドンは、世界最高の写真家集団といわれる「マグナム・フォト」に所属し、チャド内戦やオリンピックなど、世界中の大きなニュース・名場面をカメラに収めてきた。1973年には、アメリカ海外記者クラブとライフ社が創設したロバート・キャパ賞を受賞している。

Raymond Depardon
Raymond Depardon
Raymond Depardon

1964年には、東京オリンピック取材のために来日。当時22歳のドゥパルドンだったが、独自の鋭い観察眼や優れた画面の構成力を発揮し、2,000点にも及ぶモノクロ写真を残した。以後、メキシコ、ミュンヘン、モントリオールと歴代オリンピックを写真に収め、1980年モスクワ大会までの作品をまとめた写真集「J.O.」は、ロングセラーとなる人気作品となっている。


Raymond Depardon
Raymond Depardon

東京オリンピック・パラリンピックが行われる2020年に向け、再びドゥパルドンが来日。以前とは異なり、カラー写真で東京の街を捉えた。

Raymond Depardon

色彩とは、子ども時代を過ごした農村の風景や、60年代に取材で訪れたアフリカの過酷な情況とともに経験した広大な自然や文化等々と繋がるものであり、重要な表現要素の1つと彼は語る。その言葉通り、街角や駅で捉えた1コマは、色の豊かさが際立ち、見る者に温かい気持ちを与えてくれる。

Raymond Depardon
Raymond Depardon

「シャネル・ネクサス・ホール」で行われたレイモン・ドゥパルドンの写真展では、ドゥパルドンが初来日した過去作から、再び来日し撮り下ろした作品まで幅広く紹介。モノクロ写真とカラー作品が一緒に並ぶ貴重な機会。

会場では、日常に溶け込み気付かれずに過ぎていく東京の姿に改めて気づかされると共に、世界で活躍する芸術家の過去と現在を象徴的に示すものを垣間見ることができた。

そして、「シャネル・ネクサス・ホール」では、2018年1月17日から2月18日までの期間、フランク・ホーヴァットの写真展「Un moment d'une femme」が開催される。

写真家のフランク・ホーヴァットは、1928年アドリア海沿岸の町オパティヤ(当時イタリア領、現クロアチア領)生まれた。パキスタン、インド、イギリスなど、世界中を渡り歩きながら写真を撮り続けたホーヴァットは、1954年にパリへと拠点を移し、ファッション関連の仕事に注力。

Frank Horvat

一風変わった構図やルポルタージュ的感覚を取り入れた斬新な表現で1950年代から80年代にかけてファッション写真の世界に新風を吹き込み、このジャンルの黄金期を担った写真家の1人として知られており、世界で最も影響力のあるファッション写真家の1人として知られている。

Un moment d'une femme
Un moment d'une femme
Un moment d'une femme

ファッションの都とファッションをまとう女性たちの虜になったホーヴァットは、「女性」を撮影することに魅了されていった。

彼の作品の主題は、衣服だけでなく、無防備でさりげない色気のある女性像。モデルたちの突発的な表情や行動を捉えたり、たまたま居合わせた人を被写体として取り込んだりと、現場の空気感まで忠実に記録する報道取材のように独自の視点でファッションと女性を表現した。そんなルポルタージュ的感覚を取り入れた作品は、今までにない斬新な表現で人々を魅了してきた。

Un moment d'une femme

日本国内で初の本格的な個展となるこの展覧会では、「女性」を切り口に後世に多大な影響を及ぼしてきた代表作だけでなく、ジャーナリスティックな初期作、人物や町、風景、彫刻を撮影した私的なプロジェクト作品なども数多く出展される。

Frank Horvat
Frank Horvat
Frank Horvat
Frank Horvat
Frank Horvat
Frank Horvat

2018年に90歳を迎えるフランク ホーヴァット。彼の彩り溢れる人生の中でも強く印象に残る、思い出深い瞬間を切り取った作品の数々に出会うことができる展覧会である。

Frank Horvat

なお、この写真展は来年の4月に開催される国際的な写真祭「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」のプログラムとして、京都に巡回するスケジュールとなっている。

一方、「Ginza Maison Hermes Forum/銀座 メゾン エルメス フォーラム」では、12月22日から2018年3月4日までの期間、「グリーンランド」 中谷芙二子+宇吉郎展を開催する。

グリーンランド」 中谷芙二子+宇吉郎展

中谷宇吉郎は雪氷学の基礎を築いた日本を代表する実験物理学者で、1936年には世界で初めて人工的に雪の結晶をつくり出した。

「雪は天から送られた手紙である」「氷のことは氷に聞かないと分からない」などユーモラスな言葉の数々を残したことでも知られている。

中谷宇吉郎

1948年には、日本映画社の協力により科学映画「霜の華」「大雪山の雪」を完成させ、この時の日映側のスタッフだった吉野馨治、小口禎三らと共にその翌年、「中谷研究室プロダクション(岩波映画製作所の前身)」を設立した。

1957年には、グリーンランド氷冠の研究に着手し、以後1960年まで毎年グリーンランドに行き研究を続けた。科学の真理だけでなく、雄大な自然と溶け合う時の心身の感動や、対象に寄り添う自然科学研究の厳しさ、尊さを伝える宇吉郎の姿勢は、次女の芙二子に強く影響を与え続けてた。

中谷芙二子は、1966年にニューヨークにて芸術と科学の協働を理念とした実験グループ「E.A.T.(Experiments in Art and Technology)」に参加。水を用いた人工霧による「霧の彫刻」は大阪万博で発表した彼女の代表作であり、「霧のアーティスト」として名を馳せた。

中谷芙二子

手掛けた彫刻、公園、インスタレーションやパフォーマンスは、世界各地で80作品を越える国際的アーティストの芙二子は、建築・音楽・ダンス・光など、他ジャンルのアーティストと共同制作も行った。

霧のアーティスト

今回の展覧会では、「Ginza Maison Hermes Forum」のガラスブロックを氷の大地に見立て、室内での霧の実験に挑むのは中谷芙二子の「Glacial Fogfall」。その新作と共に、2人のチャレンジ精神が交錯する作品の数々が展示される。

Glacial Fogfall

タイトルに掲げたのは、晩年の宇吉郎が雪氷研究に打ち込んだ地「グリーンランド」。父娘各々が時を隔ててその地を撮影した写真で世代を跨ぐ対話が楽しめる。

Glacial Fogfall
Glacial Fogfall

娘がパリとマドリードで絵画を学び、作家表現の基盤を築きつつある頃、父は北極圏にいた。芙二子が当時描いた太陽や雲といった自然科学的なモチーフは、場所を隔てて宇吉郎の感性に呼応する。

常に変化する自然や環境を観察・記録・再生する過程そのものを、大きな営みとして捉えた芙二子と宇吉郎。展覧会を通じて、才能溢れる2人の感性の共鳴が感じられること間違いない。

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