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2017 May. 16

グッドデザイン

レトロ・モダンな佇まいが美しいプロダクトのイタリアの「Olivetti/オリベッティ社」のデスクトップコンピューター「Programma 101/プログラマ101」

Programma 101

初期のプログラム可能な商用デスクトップコンピューターで、1964年の「ニューヨーク万国博覧会」で発表され、1965年に量産が開始され、1970年代初めまでにアメリカを中心に約44,000台が販売された。

このコンピューターは、しばしば「印刷可能なプログラム電卓」または「卓上計算機」と呼ばれていた。これは、コンピューターへの恐怖心(苦手意識)を克服できるように「ポータブル計算機」として宣伝された為と言われている。また、企業に対し、コンピューター部門を経由せずに直接販売することができたという側面もあった。

Programma 101

「プログラマ101」は、当時の大型コンピューターの主要な機能を持っており、初期のコンピューターは高価で専門家にしか扱うことが出来なかったが、「プログラマ101」は簡単・経済的でプログラミング言語の知識が無くても磁気カード上にプログラムを作ることが可能であった。

Programma 101

ちなみに、「Olivetti」は、1908年にカミッロ・オリベッティにより設立されたイタリアの事務機器メーカー。自社の製品や広告のデザインに優秀なデザイナーやアーティストを起用し、事務機器に「美観」という価値観を取り入れた。1950〜70年代にかけて行われた広告活動や文化的な活動によって「Olivetti」は質の高いCI(コーポレート・アイデンティティ)を確立。これらは現代のCIの先駆けとして世界的に認知されている。

Olivetti

「ニューヨーク近代美術館(MoMA)」にも永久収蔵品が幾つかあるように、技術とデザインの両面に注力した企業で有名で、「プログラマ101」もその価値観が注ぎ込まれており、美しくシンプルでミニマルなデザインとなっている。

「プログラマ101」は、イベリアの「Olivetti」技術者ピエール・ジョルジョ・ペロットによって設計され、誰でも使える非常にシンプルな製品を提供することに注力した。マルコ・ザヌーゾの意匠、マリオ・ベリーニのデザインによるスタイリングは、当時としては人間工学的、そして、革新的で、ベリーニは「コンパッソ・ドーロ(イタリアで開催される国際デザイン賞)」で、産業デザイン賞を受賞している。

Programma 101

なお、その美しく洗練されたプロダクトデザインで、1950年代の「Olivetti」のプロダクトの中で最も成功した製品として知られるタイプライター「Lettera 22/レッテラ22」は、建築家とインダストリアルデザイナーとして有名なマルチェロ・ニッツォーリによるデザイン。

Lettera 22

このタイプライターはイタリアでは非常にポピュラーで、いまだに根強いファンが多くいる。1954年にイリノイ工科大学が過去100年間におけるベストデザインのプロダクトとして選定しており、「ニューヨーク近代美術館」に所蔵されている。

Lettera 22
Lettera 22

また、同じ「Olivetti」のタイプライターで「ニューヨーク近代美術館」に所蔵されている「Valentine /バレンタイン」は、イタリアのインダストリアルデザインの巨匠であり、建築家のエットレ・ソットサスによるデザインで、「Lettera 22/レッテラ22」とは対照的なデザインのタイプライターで、1968年に製造された。

Valentine

メカニカルな仕掛けや美しさを包み隠す方向でデザインされた「Lettera 22/レッテラ22」に対し、タイプライターとしての機械的でメカニカルな動き・仕掛けと美しさを強調する方向性でデザインされたのが「Valentine /バレンタイン」。

Valentine

そして、美しいデザインと印象的な赤のカラーリングで、発表当初から人気を博した。外観の優れたデザインだけではなく、操作性や印字されるフォントの美しさなど、ひじょうに洗練された美しいプロダクトである。

Valentine

一方、ドイツの著名な電気器具メーカー「Braun/ブラウン」社の1958年の製品ポケットラジオ「Braun T3 Pocket Radio」も、「ニューヨーク近代美術館」収蔵作品。ちなみに、「Apple/アップル」の「iPod」が、この商品からインスパイアされてデザインされたという事で、よくデザイン比較で持ち出されている製品である。

Braun T3 Pocket Radio

そのフォルムや特徴的な円型のデザインは、確かに「iPod」を彷彿させる。

Braun T3 Pocket Radio

「Apple」のインダストリアルデザイングループ担当上級副社長のジョナサン・アイブは、「Braun」社のデザイナーであるディーター・ラムスから大きな影響を受けていることは有名な話。ただ、ディーター・ラムス自身は、「Apple」のデザインは「Braun」社のデザインのコピーではなくオマージュと捉えているようだ。

洗練され、ひじょうに優れたデザインの製品を数多く創出している「Braun」社。ディーター・ラムスは、「Braun」社のデザインチームのチーフとして40年間に渡り、500を超える名作を世に送り出した巨匠。

彼のデザインポリシーを現した「Less but better /より良いデザインは、より少ないデザインである」と言う言葉は有名。

Dieter Rams

■ディーター・ラムスによる「グッド・デザイン」の10ヵ条
1. 革新的であること (Is innovative)
2. 便利な製品であること (Makes a product useful)
3. 美しいこと (Is aesthetic)
4. 分かりやすい製品にすること (Makes a product understandable)
5. でしゃばらないこと (Is unobtrusive)
6. 正直なこと (Is honest)
7. 恒久的なこと (Is long-lasting)
8. 首尾一貫していること (Is thorough down to the last detail)
9. 環境に配慮すること (Is environmentally friendly)
10. 可能な限りデザインをしないこと (Is as little design as possible)

また、ディーター・ラムスの1959年の作品に、フラットパネルの「iMac」のデザインに大きな影響を与えたと思われる斬新なデザインのスピーカ「LE1」が存在する。

LE1

ひじょうにフラット、そして、省スペースで、現代のPCを思わせるミニマルなデザインを体現している。

1950年代末期、「バウハウス」の流れをくむドイツの「ウルム造形大学」の学生たち「Braun」社と共同でラジオ・セットのデザイン・ワークを行っていた。その指揮を執っていたのが、すでにインダストリアルデザイン業界において伝説的存在であったディーター・ラムス。このデザイン・ワークのテーマには、機能的、合理的、明るいコンセプトなど様々なものが設定されていた。

LE1

「LE1」スピーカーのベースとなっているのは、英国「QUAD社」によるスピーカー「ESL-57」。「LE1」は、「ESL-57」のデザイナースモデルと言われており、「QUAD社」から技術ライセンスを受け生産されている。

QUAD ESL-57

「LE1」はプロダクト・デザイン史に名を残すモデルであったが、残念ながら500セット程度しか生産されなかった。これは、当時としてはあまりに大胆なデザインだったため、前衛的な少数の野心的ユーザーにしか受け入れられなかったためだと考えられている。

さらに、1963年に発表された「Braun Radio T 1000/ブラウン ラジオ T 1000 」は、アルミボディーのクールな美しさ、スイッチ類の絶妙なバランス、細かい部分のデイテール、どれをとっても傑作の名に相応しいプロダクトデザインで、どことなく「Power Mac G5」を彷彿とさせ、無駄を削ぎ落としたシンプルでミニマル、これ以上ない絶妙なバランスでデザインされている。

Braun Radio T 1000
Braun Radio T 1000

また、同じ1963年に発表されたラジオとレコードプレーヤーが一体となった「Braun SK55」は、洗練されたデザインと美しさで完成度の高い作品。

Braun SK55

白と黒、そして、木製の枠の優しい木肌色。そのバランスが絶妙で素晴らしく、ひじょうにスッキリとまとまった印象を与えている。

Braun SK55

ラジオとターンテーブルレコードプレイヤーという、複雑な機能の組合せを、サラリとシンプルに構成し、そして、モノとしての主張もはっきり感じさせる。より「少ない」がより良い、というディーター・ラムスのデザイン哲学を実によく体現された名作デザイン。シンプルでそれだけで美しい、プロダクトデザインのお手本ともいえるデザインである。

Braun SK55

今年の5月20日で85歳になるディーター・ラムス。今もなお活躍し続けるこのデザイン界の巨匠の人生を綴ったドキュメンタリー映画として描かれることになった。人との交流があまり得意ではないという理由から、ラムス自身に焦点を当てた本格的な映像作品はこれまでほとんど制作されなかった。

Dieter Rams

メガホンを取るゲイリー・ハストウィット監督は、2007年に大成功した「ヘルベチカ」というフォント(書体)だけをテーマに撮ったドキュメンタリー映画「ヘルベチカ〜世界を魅了する書体〜」を撮り、その後も「Objectified」「Urbanizedを発表。この2作品とも都市デザインや人間を取り巻くオブジェクトを描くドキュメンタリーであり、作品の展開はスローペース。

Gary Hustwit
ヘルベチカ〜世界を魅了する書体〜

デザイナーでない人々にとって、わかりにくいテーマについて時間をかけて紐解くことで、毎日当然のように目にするデザインになぜ関心を払うべきかをハストウィットは観客に伝えており、今回の作品には適任の監督と言える。

監督自らが募った「Kickstarter」ではすでに資金が集まっており、映画作りのためだけでなく、ラムスのデザインをアーカイヴとして保管するためにも使用されるという。映画は2017年中に完成予定。今から楽しみで仕方ない。

Dieter Rams

余談ながら、未来的で美しいフォルム。そして、斬新なアイデア。

プロダクトデザイナーのイヴ・ベアール がデザインした、ターンテーブル、レコードプレイヤーは、プレイヤー自体がレコードの上を回転するという、プレイヤーの固定概念を覆したプロダクト「Love」

Love

プレイヤーの動きのみならず、トラックをスキップできたり、スマホのアプリから操作できるなど、デジタル音楽に慣れた人にも扱いやすくなっている製品。近未来的で艶に溢れたシンプルで美しい形状のターンアームが、時計の針のようにレコードの上で回転。従来のレコードプレイヤーの煩雑な操作から開放し、レコードを聴くという体験をもっとシンプルにすべきと言う考えから開発された。

Love
Love

レコードを支える小さなベースと、その周りを回るトーンアームで構成されている。トーンアームはスピンドルの周りを回転し、その重量はスピンドルが支えているので、レコードに触れるのは針だけという構造になっており、溝には負担がかからない構造。

Love

「インテリジェント」なプレーヤーであり、Bluetooth対応のスマホアプリから送信されたコマンドに反応する。トーンアームの下面には赤外線センサーが備わっており、レコードをスキャンして各曲にトラック番号を割り振ることが可能。アプリか「Love」を軽く1回たたくと最初の曲が再生され、2回たたくと2曲目にスキップ。どのトラックを再生中かについては、光る番号が教えてくれる。

Love

デザイナーのイヴ・ベアールは、スーパーデザイナーと評され、現在におけるプロダクト・デザイナーで最も著名なデザイナーの1人。

Yves Behar

「Jawbone」のスピーカー「JAMBOX」やフィットネス用リストバンド「Jawbone UP」など、強烈な個性をもつ消費者向け製品のデザインから、発展途上国向けの「100ドルパソコン」や、HIV対策のコンドーム配布プロジェクトなど多岐にわたる活動を展開する。

JAMBOX
JAMBOX
Jawbone UP

「景色のいい生活」がモットーのワタシとしては、身の回りはデザイン性の優れたアイテムを揃えたいと願っているのです。

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