top

2017 Jul. 27

ヴィラ・デステ・コンクール

ヨーロッパのヒストリックカー・ソサエティにおいて、春から夏は自らのクルマを愉しむとともに、仲間のコレクションを愛でる季節である。

その幕開けが、イタリア北部コモ湖畔を舞台に催される「Concorso d'Eleganza Villa d'Este/コンコルソ デレガンツァ ヴィラ・デステ」、通称「ヴィラ・デステ コンクール」。現存する世界最古の自動車コンクールに、今年も世界からとびきりのクルマたちが集った。

Concorso d'Eleganza Villa d'Este
Concorso d'Eleganza Villa d'Este
Concorso d'Eleganza Villa d'Este

ちなみに、「ヴィラ・デステ・コンクール」の起源は第二次大戦前に遡る。

当時、高級車の多くはエンジン付きシャシーとボディは別々にオーダーしていた。メーカー自身がボディ製作者(イタリアの場合カロッツェリア)の選択肢をある程度用意している場合もあれば、オーナー自身が好みのカロッツェリアに持ち込む場合もあった。

ミラノの富裕層の多くは約50km北のコモ湖畔に別荘を所有しており、自らのセンスの象徴としてクルマを見せあっては楽しんでいた。そうした彼らの趣味を反映して1929年に誕生したのがこのコンクールである。

Concorso d'Eleganza Villa d'Este

今年の5月下旬に催された今回のコンクールには、4輪車52台(参加は51台)、2輪車40台が参加した。

イベントは夕方の前夜祭からスタート。

その席上で「BMW」グループの会長により、2台のコンセプトヴィークルがワールドプレミアされた。1台は未来のアーバンモビリティを想定したエレクトリックスクーターであるBMWモトラッド「コンセプト リンク」

BMWモトラッド「コンセプト リンク」

そして、もう1台はBMW「コンセプト8シリーズ」。2018年にデビュー予定の新型「8シリーズ」の新デザインランゲージは、「よりクリーン、よりシャープ、そして、よりソフィスティケートされた」であった。

BMW「コンセプト8シリーズ」
BMW「コンセプト8シリーズ」

翌日には、「BMW」グループのロールス・ロイスが「スウェップテール」を世界初公開。このクルマは、ある1人の上顧客の求めに応じて制作されたワンオフカー。そのビスポークを実現するため、オーナーとディスカッションを重ねながら4年の歳月を要したと担当者は振り返る。

スウェップテール
スウェップテール

さて、このコンクールの主役であるヒストリックカーのクラスの数は8つ。審査は12名が担当。例年通り、審査員の大半は元自動車ブランドのデザインダイレクターやエクスパートによって構成されていたが、今年はロックバンド「デュラン・デュラン」のボーカリストであるサイモン・ル・ボンの妻でモデルのヤスミン・ル・ボンも参加した。

ヤスミン・ル・ボン

2017年のテーマは、「八十日間世界一周」。これは作家ジュール・ヴェルヌによる同名の小説が刊行された1873年が、それまで枢機卿の別荘であったヴィラ・デステがグランドホテルに改装された年でもあることにちなんだものである。

当時、「いかに短い日数で世界一周できるか?」に興味とロマンを掻き立てられた知識層や貴族たちは、やがて自動車の登場とともに、時刻表に捉われない旅に目覚めると同時にスピードや記録づくりの虜となっていった。今回はそんな時代のスピリットを後年に引き継いだクルマたちが主に集められた。

Concorso d'Eleganza Villa d'Este

審査員による「ベスト オブ ショー」に選出されたのは、イタリアを代表するコレクターの1人コッラード・ロプレストが「大きな大人の小さな玩具」クラスに持ち込んだ1957年アルファ・ロメオ「ジュリエッタ SS プロトーティポ」。伝説の鬼才フランコ・スカリオーネによる幻のデザインである。

Alfaromeo Giulietta SS Prototipo 1957
Alfaromeo Giulietta SS Prototipo 1957

一方、招待者投票による「コッパ ドーロ ヴィラ・デステ」には、「スピードの悪魔たち」クラスにエントリーした1935年「ルラーニ ニッビオ」が選ばれた。ジェントルマン・ドライバーでありジャーナリスト、そして、エンジニアでもあったジョヴンニ・ルラーニ・チェルヌッシ伯爵が設計したリトルレーサーである。今回は伯爵が遺したガレージからクルマを引っ張りだした孫が、パレードでステアリングを握った。

Lurani Nibbio 1935
Lurani Nibbio 1935

興味深いクルマがもっとも多くみられたのは、「プレイボーイのトーイたち」と名付けたクラス。

1962年「ギア L6.4」は俳優ディーン・マーティンの元愛車。デトロイトで創られたシャシーをイタリアまで船で運び、トリノのギア社でボディを架装し、また、往路を折り返すという「世界一長い生産ライン」を経て制作されたクルマだ。

GHIA L 6.4 1962
GHIA L 6.4 1962

また、1968年ランボルギーニ「ミウラ」は、「シャーロック・ホームズ」の作者サー・アーサー・コナン・ドイルの子息で、放蕩息子もしくはプレイボーイとして知られたエイドリアン・ドイルが初代オーナーだったクルマ。

Lamborghini Miura P400 1968
Lamborghini Miura P400 1968

今回は未再生車、フランス語でいうところの「dans son jus(孤立無縁状態)」の車両も目立った。

一般公開日の会場であるヴィラ・エルバで開催されたRMサザビーズのオークションでは、納車直後からひたすらガレージに仕舞われて保管されていた走行10kmの1993年ポルシェ「911RSR」が埃をかぶったまま出品され、円換算にして約2億5200万円で落札された。こうした未再生車ブームは愛好家のあいだで過度なレストア以上に、その賛否をめぐりしばらく議論の対象になりそうだ。

Porsche 911 Carrera RSR 3.8 1993 at RM SOTHEBY'S AUCTION
Porsche 911 Carrera RSR 3.8 1993 at RM SOTHEBY'S AUCTION

さらに、例年に比べ際立ったのは、ルーマニア、タイなど新興国からの参加。経済発展とともにヒストリックカー文化が芽生えつつあることを予感させた。

その1つで、1934年タトラ「77」は、ブランドの故郷と同じチェコのオーナーによって持ちこまれた。

Tatra 77 1934
Tatra 77 1934

リアに搭載された空冷ユニットは巨大な3リッターV8でありながら、パワーは僅か60psにすぎない。だが、その空力ボディは当時極めて先進的なものであった。オーナー家族は極めて素朴で、初めてヴィラ・デステに参加した喜びを隠さなかった。パレードで「ベスト・インテリア賞」が贈られると、ギャラリーからは、常連参加者たちに送られるのと同じ大きな拍手が巻き起こった。

Tatra 77 1934
Tatra 77 1934

ちなみに、このタトラが参加したのは、1930年代を駆け抜けたクルマを集めたクラスで、名前は「グッバイ・ジャズ、ハロー・ラジオ」

「プレイボーイのトーイたち」しかり、ヴィラ・デステは、いつも小洒落たタイトルを各クラスに与えているのが粋である。

グッバイ・ジャズ、ハロー・ラジオ

ヴィラ・デステは、クラスだけで30近くに達することもあるアメリカのコンクールと比べ、極めてコンパクト。しかし1台1台が深いヒストリーを秘めている。

Ferrari 365GTB/4 Competizione 1970, Ferrari 365GTB/4 Spyder N.A.R.T. 1972 and Porsche 911 Carrera RSR
Ferrari 365GTB/4 Competizione 1970
Ferrari 365GTB/4 Spyder N.A.R.T. 1972 and Porsche 911 Carrera RSR

Lancia Dilambda 1932
Lancia Dilambda 1932

Lagonda Rapide 1962
Lagonda Rapide 1962

Maserati 5000 GT 1962
Maserati 5000 GT 1962

Osca MT4 1952
Osca MT4 1952

BMW M3 Rallye 1986
BMW M3 Rallye 1986

Austin MINI Cooper S Works Rally Replica 1963
Austin MINI Cooper S Works Rally Replica 1963

Ferrari 365GT/4 Berlinetta Boxer 1976
Ferrari 365GT/4 Berlinetta Boxer 1976

LOPRESTO FAMILY ON Lancia ALFA 12HP TIPO 51 1908
LOPRESTO FAMILY ON Lancia ALFA 12HP TIPO 51 1908

Lancia Flaminia Sport Zagato 1959
Lancia Flaminia Sport Zagato 1959

Astra Coup 1952
Astra Coup 1952

毎年参加車たちを選ぶのは、1枚の絵を描くような心境だと、語るのは車両選考委員の1人。まさに、ヴィラ・デステは絵画である。だからこそ、このイベントは世界のヒストリックカー界で輝き続けている。

Concorso d'Eleganza Villa d'Este
Concorso d'Eleganza Villa d'Este

Touch the heartstrings | Facebookページも宣伝


 
backnumber
 
<< Back Next >>
backnumber
 
pagetop