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2017 Jul. 13

美術展あれこれ

日本初、オランダの「ファン・ゴッホ美術館」との国際共同プロジェクト「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」が開催される。

ゴッホ展 巡りゆく日本の夢

「北海道立近代美術館」では8月26日から、また、「東京都美術館」では10月24日から、そして、「京都国立近代美術館」では2018年1月20日から順次開催される。

ゴッホ展 巡りゆく日本の夢

日本を夢想したファン・ゴッホ。そして、ファン・ゴッホに憧憬した日本人。その交差の軌跡をたどる展覧会は、「ファン・ゴッホのジャポニスム」と「日本人のファン・ゴッホ巡礼」の2部構成に分け、関係性を両方向から検証する。

第1部 日本に魅了されたファン・ゴッホ
ファン・ゴッホは、パリの画商店で大量の浮世絵と出会い、鮮やかな色彩や質の高さにひどく感銘し、魅了された。その大きな衝撃は幾度となく彼自身の作品に投影され、肖像画の背景に描き込むほどであった。

ポプラ林の中の二人
ポプラ林の中の二人

夾竹桃と本のある靜物
夾竹桃と本のある靜物

カフェ・ル・タンブランのアゴスティーナ・セガトーリ
カフェ・ル・タンブランのアゴスティーナ・セガトーリ

第1部では、国内外のコレクションより厳選した「タラスコンの乗合馬車」「雪景色」など4つの作品を日本初公開。

タラスコンの乗合馬車
タラスコンの乗合馬車

雪景色
雪景色

さらに、彼が描いた浮世絵の模写や構図や色彩の表現様式、理想郷として夢見ていた日本のイメージを反映した作品など約40点を展示する。また、浮世絵をはじめとする約50点の日本美術作品もあわせて公開。さまざまな角度から日本の影響を紐解いていく。

花魁(渓斎英泉による)
花魁(渓斎英泉による)

第2部 日本人のファン・ゴッホ巡礼
1890年、この世を去ったファン・ゴッホ。彼の最期を看取った医師のポール=フェルディナン・ガシェ一家は、残されたファン・ゴッホの作品の多くを大切に所蔵していた。

それら作品を一目見ようと、彼の生涯や作品に強い憧れを抱いた日本の小説家や学者、美術家たちは、ファン・ゴッホ終焉の地オーヴェールにあるガシェ家を訪れた。その記録として「芳名録」に、240人あまりの来訪者が名前を残したのだった。第2部では、フランスの「ギメ東洋美術館」に所蔵されている3冊の「芳名録」を日本初公開。

芳名録

さらに、近代日本の知識人たちが訪れたオーヴェール巡礼の実相を、約90点の豊富な資料から辿る。

加えて、ここでは洋画家の佐伯祐三の「オーヴェールの教会」、前田寛治の「ゴッホの墓」といった、巡礼によって描かれた日本近代絵画の名作も展観できる。さらに、当時の写真や手紙などの資料、日本画家の橋本関雪がガシェ家訪問時に撮影した貴重な映像もあわせて紹介。

佐伯祐三「オーヴェールの教会」
佐伯祐三「オーヴェールの教会」

前田寛治「ゴッホの墓」
前田寛治「ゴッホの墓」

そして、ゴッホの自画像が12年ぶりに来日し、全会場で公開されることが決定。この作品は、パリ滞在中の最後期に描かれたもので、彼の自画像の中でも高さ60cmを超えるひときわ大きいもので、近くに寄って眺めると、実に細かなタッチが入念に重ねられている。画面全体は静謐としていながらも、青やオレンジなど様々な色彩の連なりに、ゴッホのエネルギーを感じさせる1枚である。

画家としての自画像
画家としての自画像

現在、新宿にある「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」では、近代日本画の巨匠である吉田博の絵画を展示する「生誕140周年 吉田博展 山と水の風景(YOSHIDA HIROSHI A Retrospective)」が、8月27日まで開催中。

生誕140周年 吉田博展 山と水の風景

今回開催されている「吉田博展」では、明治から昭和にかけて風景画の第一人者として活躍した吉田博の作品を初期から晩年まで一挙公開。10代から「絵の鬼」と言われるほどの鍛錬を積み、欧米を中心に世界各国で活躍した吉田博の絵画の魅力を存分に楽しむことができる。吉田の名声を確固たるものにしたのは、確かな絵の腕はもちろん、その行動力であるともいえる。仏留学を国費での留学をせず、自費でわずかな生活費を持ち渡米、「デトロイト美術館」で作品を売り込み、1000ドル分もの自らの絵を売り上げた。ちなみに、当時の1000ドルは、小学校教諭の生活費13年分に相当したという。

冬木立
冬木立

雲叡深秋
雲叡深秋

チューリンガムの黄昏
チューリンガムの黄昏

ヴェニスの運河
ヴェニスの運河

堀切寺
堀切寺

溶鉱炉
溶鉱炉

これ以後、吉田は欧米で次々に展覧会を成功させ、GHQマッカーサーやイギリス王室のダイアナ妃など、海外の要人からも高い評価を得ていった。

ケンジントン宮殿の中にある執務室のダイアナ妃
ケンジントン宮殿の中にある執務室のダイアナ妃

自然美に強く心惹かれていた吉田博。とりわけ高山への関心は高く、題材として多く起用した。毎年、日本アルプスの山々に登っていたという吉田の自然への思いが伝わってきそうな美しい山々の絵画は見どころの1つである。

穂高山
穂高山

初秋
初秋

アメリカで、風俗画としての浮世絵が人気であることに不満を覚えた吉田博は、後半生以降木版画に取り掛かった。洋画のタッチを基調に、高度な伝統技術を組み合わせ鮮やかな色彩表現を可能とした木版画は吉田の代表作となっていく。

印度と東南アジア タジマハルの庭/木版
印度と東南アジア タジマハルの庭/木版

日本アルプス十二題 劔山の朝/木版
日本アルプス十二題 劔山の朝/木版

陽光のきらめきや帆船の影のゆらぎを見事に表現した「瀬戸内海集 帆船 朝」は、水を描かせたら右に出る者はいないといわれた吉田がその真骨頂を示した作品と言える。

瀬戸内海集 帆船 朝/木版
瀬戸内海集 帆船 朝/木版

「吉田博展」が終了し、9月16日から11月12日までの期間、「東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館」では、展覧会「生誕120年 東郷青児展 抒情と美のひみつ」が開催される。

生誕120年 東郷青児展 抒情と美のひみつ

生誕120年を迎えた東郷青児は、弱冠19歳で仁科展に発表した「パラソルさせる女」で、日本最初期の前衛絵画として話題になり、昭和初期のモダンな美人画は近代女性のタイプを変えてしまったとも呼ばれる実力者になった。

バイオレット
バイオレット

アール・デコ全盛期の1920年代に、フランスへ渡り、ピカソとも交流。大胆さな画風と芸術家たちとの華やかな人間関係から、時を超え今もなお注目を集める人物である。

東郷の生誕120年を記念して行われる「東郷青児展 抒情と美のひみつ」では、全4章に渡って、1950年代末までを中心とする作品61点と資料39件を展示。東京では20年ぶりとなる回顧展となる。

平和と団結
平和と団結

若い日の思い出
若い日の思い出

日本最初期の前衛的絵画群
見所となるのは、デビュー作「パラソルさせる女」と代表作「サルタンバンク」。1916年処女作として発表された「パラソルさせる女」のキュビスムや未来派を取り入れた大胆な画風は、多くの人の目に斬新に映った。「未来派風」と呼ばれ、前衛的な新人として注目されたほどである。また、代表作である「サルタンバンク」は、パリに渡った東郷の姿を映し出すように、異邦人の郷愁を漂わせる作品である。

パラソルさせる女
パラソルさせる女

サルタンバンク
サルタンバンク

フランス仕込みの洒落たデザイン
アール・デコ全盛期の1920年代に、フランスへ渡った東郷作品は、フランス仕込みのセンスが随所で感じられる。装丁本や雑誌の表紙絵、舞台装置の写真など、昭和モダン文化を彩ったデザインの仕事も会場で紹介。

ピカソ・藤田嗣治など芸術家たちの華やかな人間関係
東郷の周りを囲む芸術家たちは、著名な者が多く華やか。ピカソをはじめ、山田耕筰、有島生馬、古賀春江などと親交を結んでいる。帰国後は、宇野千代、川端康成と関係を深め、1930年代後半から40年代前半にかけては、藤田嗣治と共に百貨店の大装飾画に挑戦。泰西名画調のモチーフをレパートリーに加え、近代的な女性美を描き出し、以後、東郷の芸術家としての人生を大きく変える。藤田嗣治と競作した京都「丸物百貨店」の対の壁画なども展示される。

めったに出会えない希少な作品
回顧展となる今回は、「久留米市美術館」が収蔵した「扇」を83年ぶりに一般公開。また、1929年作の「超現実派の散歩」と同時期のモダニズム時代の作品、個人宅に贈った珍しい小品、珠玉の美人画、温泉を飾ったモザイクタイルといった希少な作品群も会場に登場する。さらに、フランス風景画2点と女性像1点も東京で初公開。

超現実派の散歩
超現実派の散歩

8月22日から10月15日までの期間、「京都国立近代美術館」では、展覧会「絹谷幸二 色彩とイメージの旅」が開催される。

絹谷幸二 色彩とイメージの旅

この展覧会は、日本の美術界において第一線で活躍している作家・絹谷幸二の、多彩な仕事の全貌に迫る展覧会。初期から現在に至るまでの絵画の代表作が展示されるほか、陶芸やガラス作品、映像作品といった幅広い表現活動まで一挙に紹介する。

銀嶺の女神
銀嶺の女神

絹谷幸二は、1966年に東京藝術大学美術学部油画科を卒業後、同大学院の壁画科へ進学し、ヨーロッパの壁画技法であるアフレスコ(フレスコ画)の研究に没頭。1971年にイタリアへ留学し、アフレスコ古典画法および現代アフレスコの研究に取り組み、帰国後に画家の登竜門である「安井賞」を歴代最年少で受賞した。

絹谷の作品は、アフレスコ技法を駆使した色彩豊かでエネルギッシュな画面が特徴。劇画の要素を取り入れた表現により、新たな絵画ジャンルを切り開くなど、日本の文化発展に貢献したほか、日本芸術院会員、文化功労者としても活躍している。

展覧会の見どころは、初期の代表作として知られる「アンジェラと蒼い空U」が、これに先立つ「アンジェラと蒼い空T」と初めて並んで展示されること。

アンジェラと蒼い空T
アンジェラと蒼い空T

アンジェラと蒼い空U
アンジェラと蒼い空U

また、興福寺の国宝「無著・世親立像」を描いた「無著・世親」の初公開も見所の1つとなる。

無著・世親
無著・世親

展示構成は、絹谷が少年時代から抱き続ける無常観を表現した、初期の「蒼のシリーズ」から始まり、イタリア留学によって色彩が花開いた70年代初頭の作品、安井賞受賞作である「アンセルモ氏の肖像」、絹谷作品の主要テーマである「肖像画」作品まで、年代順に展開される。

蒼の間隙
蒼の間隙

アンセルモ氏の肖像
アンセルモ氏の肖像

さらに、立体や陶芸、ガラス、映像といった幅広い媒体で表現された作品も登場。それらを通して、常に変化したイメージを展開する作家の頭の中を覗くことを試みる。映像では、三面スクリーンに絹谷作品のモチーフが縦横無尽に駆け巡る壮大なスケールの作品が出品される。

オープン・ザ・ボックス・オブ・パンドラ
オープン・ザ・ボックス・オブ・パンドラ

その他、故郷である奈良を描いた絵画や、今回の展覧会のために制作された京都を題材とした新作も初公開。日本とイタリア2つの故郷を持つ絹谷による多彩な表現の数々は、観るものを飽きさせることなく、常に新しい世界を見せてくれること間違いない。

蒼天富嶽龍宝図
蒼天富嶽龍宝図

光輝龍王二条城/迎臨飛龍金閣寺
光輝龍王二条城 / 迎臨飛龍金閣寺

なお、大阪の梅田スカイビル27階にある「絹谷幸二 天空美術館」では、8月16日から11月27日まで、展覧会開催を記念した特別展示が実施され、アフレスコの傑作「光ふる街」が初公開される。

絹谷幸二 天空美術館

なお、「絹谷幸二 天空美術館」は、絵の中に飛び込む大迫力の3D映像体験や、アフレスコとミクストメディアによる作品などを楽しめる新型ミュージアムとして知られている。

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