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2016 Nov. 21

山種美術館とすみだ北斎美術館

広尾にある「山種美術館」は、山種証券(現/SMBCフレンド証券)の創立者である山ア種二が蒐集した作品をもとに、日本初の日本画専門美術館として開館し、2016年に50周年を迎えた。

山種美術館

これを記念し、創立者の山ア種二コレクションから明治以降を代表する日本画を厳選し、12月10日から2017年2月5日までの期間、「日本画の教科書 京都編 栖鳳、松園から竹喬、平八郎へ」が開催される。

今回の展覧会では、コレクションの中でも京都画壇にスポットを当てた作品が紹介される。「日本画の教科書」と題された通り、日本の近代絵画を語る上で欠かせない名画ばかりがラインナップ。

西村五雲「白熊」1907(明治40)年
西村五雲「白熊」1907(明治40)年

橋本関雪「霜の朝」1935-44年頃
橋本関雪「霜の朝」1935-44年頃

明治時代以降、大きく様変わりする環境の中で、日本画家たちは流入してきた西洋画を強く意識し、新時代に相応しい日本画を模索し続けてきた。

なかでも、京都は平安時代以来の「やまと絵」の表現や、江戸時代の円山四条派から続く写生の伝統を受け継ぐ一方、日本美術の発展のため日本初の画学校を開校させるなど、革新的かつ組織的な取り組みが見られた。

土田麦僊「大原女」1915(大正4)年
土田麦僊「大原女」1915(大正4)年

それぞれの画家が、日本画と西洋の「美術」の間に生まれた矛盾に向き合い、数々のユニークな作品が誕生することとなった。

この展覧会では、そんな大きな変化の時代に活躍した画家たちが登場。なかでも見所は、「山種美術館」の顔とも言える竹内栖鳳の「班猫(重要文化財)」。つい触れてみたくなるほど見事に表現された毛並みを前面に押し出した柔らかい印象の作品である。上目遣いで舌を出すその表情からは、愛らしく気ままな猫の気質がよく伝わってくる。

竹内栖鳳「班猫」【重要文化財】1924(大正13)年
竹内栖鳳「班猫」【重要文化財】1924(大正13)年

さらに、重要文化財でもある村上華岳の「裸婦図(重要文化財)」も展示。まるで仏教画を思わせるような女性の顔立ちや蓮のモチーフが、「裸婦」という西洋の油絵の伝統を意識した題材、そして、近代的な描き方で表現されている。西洋と日本の古典が折衷した、この時代を代表するような作品といえる。

村上華岳「裸婦図」【重要文化財】1920(大正9)年
村上華岳「裸婦図」【重要文化財】1920(大正9)年

その他にも、上村松園や山元春挙、福田平八郎、小野竹喬、山口華楊、上村松篁といった明治時代から現代にいたるまで、京都画壇の画家たちの珠玉の名品を一堂に紹介。どの作品も切手や教科書などで一度は目にしたことのある有名なものばかりなので、日本画の知識がなくても気軽に楽しむことができる展覧会である。

上村松園「牡丹雪」1944(昭和19)年
上村松園「牡丹雪」1944(昭和19)年

山元春挙「火口の水」1925(大正14)年
山元春挙「火口の水」1925(大正14)年

福田平八郎「筍」
福田平八郎「筍」

小野竹喬「沖の灯」1977(昭和52)年
小野竹喬「沖の灯」1977(昭和52)年

山口華楊「生」1973(昭和48)年
山口華楊「生」1973(昭和48)年

上村松篁「白孔雀」1973(昭和48)年
上村松篁「白孔雀」1973(昭和48)年

伝統を規範としながら旧来の枠組みを超え、日本画に新局面をもたらした京都画壇の魅力溢れる展覧会。50周年ならではのこの機会に、ぜひ足を運びたいものだ。

以前にもお伝えしたが、11月22日に「すみだ北斎美術館」が開館する。世界的な画家として評価の高い葛飾北斎は、現在の墨田区北斎通り付近にあたる本所割下水で生まれ、約90年にも及ぶ長い生涯のうち、そのほとんどを「すみだ」で過ごしている。

すみだ北斎美術館
すみだ北斎美術館

「すみだ北斎美術館」では、葛飾北斎が残した多くの名作を展示。館内は4階に常設展示室、3〜4階に企画展示室を配置し、様々な企画を通して、北斎と「すみだ」との関わりについて伝えていく。

そして、開館記念展として「北斎の帰還 幻の絵巻と名品コレクション」が、2017年1月15日まで開催される。墨田区所蔵の数々の名品・優品の中から、北斎の肉筆画、版画、摺物、版本など約120点を一堂に展示。北斎の代表作といえる作品の数々を間近に見ることができる貴重な機会となっている。

冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏
冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏

展示は幾つかの章にわかれており、北斎本人および同時代や後世の作家たちが描いた北斎の姿などを紹介する「序章」、また、北斎の眼を通して描かれた「すみだ」の作品を展示する「1章」、そして、約100年ぶりに再発見された幻の絵巻「隅田川両岸景色図巻」を全巻一挙に公開する「2章」などで構成されている。

隅田川両岸景色図巻(部分:吾妻橋付近 拡大図)
隅田川両岸景色図巻(部分:吾妻橋付近 拡大図)

注目は、約100年ぶりに再発見された幻の絵巻「隅田川両岸景色図巻」。かつて北斎壮年期の傑作の1つと言われ、彼の肉筆画の中で最長とされる7mの作品である。両国橋から山谷堀あたりまでの隅田川両岸の景色が、洋風の陰影法を交えた表現で描かれており、また、新吉原での様子も細緻な筆遣いで表現されているのが特徴。今回の展覧会では全巻一挙に公開される。

隅田川両岸景色図巻
隅田川両岸景色図巻

さらに、富士山を様々な角度から描いた「冨嶽三十六景」の作品も多数登場。なかでも「冨嶽三十六景 山下白雨」は、山を堺に対象的な天候を描くことにより、富士山の大きさや高さを表現した名作。

冨嶽三十六景 山下白雨

なお、雷の部分は「すみだ北斎美術館」のロゴマークデザインのもとになっており、富士山の裾野に描かれている稲妻に、最小限のデザイン処理を施してマーク化。シャープで力強いフォルムが鮮烈さとエネルギーを感じさせ、北斎の画業に対する挑戦的な一面を連想させるとともに、空高くに大きく広がる稲妻は、世界に向けて発信するという、美術館の理念を表現している。

「すみだ北斎美術館」のロゴマーク

また、日本各地の「滝」を題材にした「諸国瀧廻り」も面白い。会場では、岐阜県の「阿弥陀ヶ瀧」がモデルとなった「木曽路/奥阿弥陀ヶ瀧」や、奈良県の高滝を描いた「和州吉野義経馬洗瀧」が展示される。なお、「木曽路/奥阿弥陀ヶ瀧」は、上部の丸い滝口から勢い良く落下する水の流れや、滝口の部分にゆらめくような波紋が描かれ、複数の視点から1つの対象を捉える手法を取った作品となっている。

木曽路/奥阿弥陀ヶ瀧
木曽路/奥阿弥陀ヶ瀧

ちなみに、「常設展示室」は7つのエリアで構成されており、各時代の代表作をエピソードと交えて紹介するコーナーや、浮世絵の製作工程を映像で紹介するエリアを展開。また、作品だけではなく、リアルに再現した北斎のアトリエも見所の1つ。

常設展示室

浮世絵師として有名な北斎が生み出してきた浮世絵作品の制作過程を、高精密モニターの動画でじっくりと見られるコーナーも登場。

動画では名作「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を刷る様子が映し出され、輪郭線の象りから完成までの、各プロセスを鑑賞することができる。だんだんと色味が深まり、1つの絵が完成していく様子を見られる貴重な体験ができる。

1つの絵が完成していく様子を見られる貴重な体験ができる

門人の露木為一が残した絵を元に再現された北斎のアトリエの再現模型では、彼はこたつに半分入りながら熱心に絵を描き、一緒に暮らす娘の阿栄が傍らで見守っている。北斎を訪ねた人の話しでは、ゴミが散らかっていても意に介さず、平然と絵を書いていたと言われている。

北斎のアトリエの再現模型
北斎のアトリエの再現模型

そして、会場には無数のタッチパネルが配置されており、展示作品の詳細や時代背景を知ることができる。時代ごとや「冨嶽三十六景」「諸国瀧廻り」などシリーズごとに作品を見ることができる便利なツールである。

北斎のアトリエの再現模型

「すみだ北斎美術館」で、北斎の目指した芸術世界を体感してみるのもグッドだ。

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