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2016 Jun. 12

神の手 ニッポン展

世の中には、紙やボードなどを使用して、また、どこにでもある素材から、豊かな想像力と技巧を総動員し、その器用な指先を存分に駆使し、子供の豊かな表情や命を吹き込まれた人間や動物たち、さらに、目を見張るような色鮮やかで細やかな色彩を駆使した造形物、あるいは、複雑な建築物やその集合体である街を、見事に作り上げてしまう作家たちがいる。

本池秀夫 「TOYS MUSEUM」
本池秀夫 「TOYS MUSEUM」

部分写真と制作風景
部分写真と制作風景

その作品群を見ると、出来栄えの凄さに感心することはもとより、これが人間の手によって作られたものかと驚き、さらには、感動で魂が震えることもしばしば。手先の器用さだけでなく、感性の豊かさや、作品に向かう真摯な姿が目に浮かび、日本人の素晴らしさにあらためて気付かされ、そして、彼や彼女らの創作アート作品1つ1つから元気や勇気がいただける。

日本人は、その手で多様な文化・文明をカタチにしてきた。それは、工芸、民芸、アート作品として私たちの生活に彩りを与えている。それらの作品は、ジャンルは異なれど、どれも日本人ならではの意識・技・精神という共通した「軸=価値」を持つ。卓越した想像/創造力と技術を駆使し、日本独自の価値を持ったオンリーワンの作品を作り出す作家たちは、まさに「神の手を持つ作家」と呼べる人々である。

オンリーワンの作品を作り出す作家たち
オンリーワンの作品を作り出す作家たち
オンリーワンの作品を作り出す作家たち

そんな作家たちには、それぞれに個展を開催できるだけの実力と固定ファンがいる。しかし、選ばれた「神の手を持つ作家たち」が一堂に会し、作品を展示できるとしたら、その感動は数十倍、いや数百倍に膨らむこと間違いない。より多くの人々に、日本人の手から生み出される可能性や素晴らしさを多角的で力強くメッセージできるのではないかというコンセプトのもと、「神の手 ニッポン展」は誕生した。

神の手 ニッポン展

これは、「ものづくり日本」の応援イベントであり、日本のものづくりスピリッツを受け継ぎながら、現代のセンス&フィールドで意欲的に創作活動を行っているアーティストたちの作品を一堂に集めた合同展である。

匠を感じ、繊細さが見える、とても人間技とは思えない、まさに「神の手」によって創られたような高度な技術に裏打ちされた作品群を通し、日本人ならて?はの手先の器用さや感性の豊かさ、探究心や真摯さにあらためて気づいてもらうことで、日本人としての誇りや矜恃を再確認してもらうことを狙いとしており、今後、「日本発 新たなアートムーブメント」として世界に発信する。

昨年、目黒雅叙園の百段階段での最初の「神の手ニッポン展」、そして、今年の4月9日から5月29日まで「高知県立美術館 県民ギャラリー」で開催された「神の手ニッポン展」、今後は7月8日から9月4日までの期間、名古屋「テレピアホール」で開催される。

神の手 ニッポン展

出展作家には、ペーパーアーティストとして多数の受賞歴を持つ太田隆司や、「情景王」の異名をとるジオラマアーティスト山田卓司らが名を連ねる。

日本大学芸術学部デザイン学科在学時より、自動車のイラストを描きはじめた太田隆司は、卒業後にはペーパーアート作品の制作に専念。

太田隆司「東京下町 人を、暮らしをのせて 2」
太田隆司「東京下町 人を、暮らしをのせて 2」

1995年自動車専門誌「CAR GRAPHIC」で「PAPER MUSEUM」の連載を開始。また、「六本木AXISギャラリー」「横浜・八景島シーパラダイス」「名古屋・トヨタ博物館」「三重県四日市市立美術館」「日本橋三越本店」などで個展を開催。テレビ東京の「TVチャンピオン」ペーパークラフト王選手権で優勝するなど、受賞歴は多数。ご存知の方も多いと思う。

太田隆司「東京雷門 西暦2007」
太田隆司「東京雷門 西暦2007」

また、幼い頃より模型工作を趣味とし、中学時代には地元のデパートで行われた模型コンテストで毎年入賞していた山田卓司は、高校時代には模型同好会を発足、社会人の模型サークル「ダス・ライヒの会」設立にも参加する。1978年に上京、日本工学院専門学校に入学。在学中に模型雑誌「月刊ホビージャパン」に執筆を始め、卒業後は工業模型製作会社にて、原子力プラントや工業模型の製作に従事。1987年に浜松市に戻り、フリーのプロモデラーとして活動開始。

山田卓司

模型雑誌で作品を発表する傍ら、商品原型、イベント用情景を製作。静岡、浜松、鳥取、沖縄などでジオラマ作品展を開催、模型教室の講師、テレビ出演など多数。

山田卓司「家族」
山田卓司「家族」
スケールは1/6、そして、机上の作品はさらにその1/6に縮小されている

1994年と1995年には、テレビ東京「TVチャンピオン」全国プロモデラー王選手権に連続優勝し、さらに、1998年から3年連続で「TVチャンピオン」全国プロモデラー王選手権に優勝。

2000年テレビ東京「TVチャンピオン 第7回プロモデラー王選手権」優勝作品。
2000年テレビ東京「TVチャンピオン 第7回プロモデラー王選手権」優勝作品。
この時のテーマは「勇気」。子供の頃に見たアメリカの雑誌「LIFE」の写真集に掲載された写真が元イメージで、怖そうな犬の側に転がってしまった妹のボールを取りに行く、頼もしいお兄ちゃんの物語。

他にも元建築士という経歴を生かし、日本家屋や商屋を独自の遠近法を用いて表現するミニチュアハウスアーティスト島木英文や、ギネス世界記録に認定されているビーズアーティスト金谷美帆、立体切り絵アーティストSouMa、創作人形作家の安部朱美らも参加。

島木英文のミニチュアハウスは、遠近法を使用して制作されている。島木作品の上蓋を外し、舞台裏を見れば、部屋の形はもちろん、机などの調度品、そして、1枚1枚の畳さえも、奥へ進むほど細くなる台形をしている。

島木英文 「斜陽館(太宰治記念館)」
島木英文 「斜陽館(太宰治記念館)」
島木英文 「斜陽館(太宰治記念館)」

また、そればかりではなく、断面図を見ると、奥へ向かって天井は低く、床は高くなるように設計されている。さらに驚くべきことは、その斜面に合わせて椅子の脚の長さなども微妙に変えているという。本物と見間違うほどの奥行き感と臨場感溢れる作品に仕上がっている。まさに、遠近法の匠である。

島木英文「小泉八雲邸」
島木英文「小泉八雲邸」

島木英文 「きじや」
島木英文 「きじや」

また、学習院大学経済学部在学中に、「ミス鎌倉」「ミス熱海梅」の女王に輝いた金谷美帆は、「IKC」アナウンサーを経て、1998年よりビーズ創作活動を始めた。

金谷美帆
金谷美帆

代表作は、総ビーズ織り「和衣裳」(165万余粒使用)、そして、206万3738粒使用した総ビーズ織り六曲屏風「鎌倉」では、2009年にギネス世界記録に認定されている。

金谷美帆「鎌倉」
金谷美帆「鎌倉」

小学生の頃から切り絵を始めたSouMaは、美術やデザイン関係の学校で学んだ経験はなく、すべて自身の感性に任せて作品を創作するため、唯一無二の独創的な作風が特徴。

SouMa

作風は非常に多岐に渡っており、平面的なものはもとより、立体的なもの、光との融合など、従来の「切り絵作家」という枠を完全に超えた創作活動を展開している。

SouMa「京都地図」
SouMa「京都地図」

SouMa「エッフェル塔」
SouMa「エッフェル塔」

SouMa「紫陽花」
SouMa「紫陽花」

SouMa「向日葵」
SouMa「向日葵」

なお、すての作品は繋がった1枚の紙からできている。島根県出身の彼女は、島根県松江市の観光大使を勤めている。

本来は「紙の建築家」とも呼ばれるポップアップアーティストHIROKOが参加予定であったが、現在病気療養中で展示ができず、ゲストアーティストとして「昭和の家族のきずな伝道師」安部珠美が参加する。

安部珠美

子供の頃は人形に興味はなく、人形で遊んだこともなかった彼女。さらには、工芸展といったものに足を運んだ経験も一切なかった彼女に転機が訪れたのは30歳すぎ。3人の子供に読み聞かせる本を探しに図書館通いをしていた頃、ふと手にとった「紙粘土人形の本」がきっかけになり、その瞬間に不思議と衝撃が走り、作りたいと思ったという。

1981年から、模索しながら独自の技法で創作粘土人形を始めて10数年。幾つかのコンテストで賞を受けるようになっていた彼女は、2008年に京都で実施された「宝鏡寺門跡人形公募展」において、作品「かあちゃんよんで」が大賞を受賞し、翌年、国民読書年ポスターに起用されてから、一躍、全国区のアーティストとして認知されるようになった。

「かあちゃんよんで」
安部珠美「かあちゃんよんで」

彼女は一貫しており、人々の「きずな」をテーマに、昭和30年代の家族の姿を石粉粘土人形で表現する。そこには体温があり、匂いがあり、思いやりがあり、通いあう心がある。風鈴が揺れ、虫が鳴き、みんな貧しかったけれども、そこに希望はあった。そして、彼女の作品には、かつて日本のどこにいでも普通に目にしていたのに、今ではまったくといっていいほど見られない情景がある。

安部朱美 「或る夏の日」
安部朱美 「或る夏の日」

「神の手 ニッポン展」は、日本人ならではの手先の器用さや感性の豊かさ、探究心や真摯さを体感でき、その完成度に驚くこと間違いない展覧会である。

神の手 ニッポン展

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