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2016 Jun. 6

ポール・スミス展

最近、関西圏のテレビCMで時々放映されているので、ご存知の方も多いかもしれない。

カラフルな色使いにウィットに富んだモチーフ…。ロンドンのカルチャーを映し出し、トラディショナルでありながら革新的で誰もが知るイギリス生まれのファッションデザイナーのポール・スミス。

Paul Smith

彼のポール・スミスたる所以を解き明かす展覧会「HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH」が、6月4日から「京都国立近代美術館」で始まった。

2013年11月にロンドンのデザイン・ミュージアムにて開幕し、当時の観客動員数を塗り替えたポール・スミスのエキシビションが、ベルギー・ハッセルト、スコットランド・グラスゴーを経て、いよいよ日本に上陸。彼の頭の中を覗いてみたかのようなデジタルインスタレーションもある楽しい展覧会である。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

初夏の京都、緑の木々に映える明るいピンクで「HELLO KYOTO」と描かれたエントランスから展示はスタートする。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

最初のブースでは、ポールのコレクションの中から数々の絵画や写真が壁一面に展示されている。このコレクションには、アンディ・ウォーホールのような著名なアーティストの作品もあれば、友人や家族、時にポールのファンから送られてきたものもある。この展示を通じて、「何でもないものからも、価値を見いだしていくこと」というポール・スミスのクリエーションの根源に流れるメッセージが伝わってくるようだ。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

■ ポールのキャリアの「はじまりの場所」
続いては、ポール自身も「この展覧会では、自分のすべてを正直に曝け出した」と語るように、彼のキャリアがどのようにスタートしたのかを回顧するブースが用意されている。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

手を大きく伸ばせば反対の壁に触れてしまいそうな3メートル四方のホワイトキューブ。このサイズこそが、ポール・スミスが1970年にノッティンガムにオープンした1号館のサイズである。来場者はこのキューブに入ることで、ここからポールの物語が広がっていったのだと、フィジカルに体感することになる。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

そのキューブの奥には、ポール・スミスの最初のプレスルームが再現されている。といっても、このプレスルームは、パリのホテルの一室。ベッドの上に黒い布を引き、シャツ6枚とニット2枚が置かれ、スーツ2着がクローゼットにかけられている。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

そう、いまや世界70ヶ国で販売されるポール・スミスも、たった10着のコレクションからスタートした。

■ ポールのクリエーションを支える人
彼のルーツを語る上で欠かせない人物が2人いる。1人は11歳のポールに写真の楽しさを教えてくれたアマチュアカメラマンだった父。会場には、父からポールが譲り受けたカメラと共に、デビッド・ベイリーやマリオ・マスティーノなど著名なカメラマンが手掛けた広告キャンペーンビジュアルが並んでいる。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
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そして、2人目はポールに服づくりを教えてくれた妻のポーリーン。ポール自身「彼女がいなければ、何も実現できなかったでしょう」と語る。彼女が与えてくれたファッションにおける大切な要素を、過去のビジュアルやスケッチと共に披露する。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

■ ポールの頭の中には何が映る?
今回の展示では、映像インスタレーションも用意されている。ポールの脳内を表現したブース。ここでは数々のイメージがデジタルビジョンに次々と映し出され、テキスタイルの柄や色彩のインスピレーションになったと思われる、ポールが目にとめた様々なシーンがまるでコラージュのように伝わってくる。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
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■ ポールのオフィスとデザインスタジオをそっくり再現
今回の展覧会には、いわゆるファッションの展覧会のようにマネキンが並ぶような展示はない。もっと根源的なファッションがどうやって生まれてくるのかを、詳らかに伝える展示を目指したと語る、「HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH」を企画したデザインミュージアム館長のデヤン・スジック。

ポール本人も、「もし僕が18歳の学生だったら、刺激的なこの展示会場から1日出てこられないくらいわくわくすると思うよ」とコメントする。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

型紙からスワッチまで、そっくりそのまま再現したデザインスタジオからは「クリエーションがどんな環境の中から生まれるのか」を真っ直ぐに伝えたいという意図が汲み取れる。また、ここに展示されるパソコンには次々と映像が映し出され、テーブルに置かれたラジオからは音楽が流れてくる。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
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まさに、ここでスタッフとポールたちが動き出しそうな程リアルにスタジオが再現されている。

■ 世界に広がるポールのクリエーション
展覧会も終盤に近づいてくると、ポールの頭の中から紡ぎ出された具体的なシェイプを持った展示へと遷っていく。「1つとして同じ店舗はない」という、世界各都市のポール・スミスのショップの外観や内観、また、ショップデザインにおいて大事な役割を果たしている床材やモチーフなども合わせて展示されている。

そして、最後のブースにはファッションデザイナーであるポール・スミスの手腕を余すことなく詰め込んだ洋服が展示。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

かつて、礼服を仕立てるテーラーで学んだポールが大切にする仕立ての技術が伝わるアイテムもあれば、ポールが大切にしている「シンプルな中に特別な何か」を添えるために考え出した裏地やステッチをポップにするというアイデアに触れられる洋服も興味深い。

さらに、出口へ向かうと、壁に貼られた大きなポストイットに書かれた「EVERY DAY IS A NEW BEGINNIGS(毎日が新しい始まり)」というポールの言葉で閉じられた展覧会である。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

ポール・スミスは、いつだって新しい何かに「HELLO」といえる眼差しを持ってクリエーションと向き合い続けているということが、この展覧会からヒシヒシと伝わってくることは間違いない。

「いつも新しい目で世の中を見続けること」「何でもないことから、何かを見つける目を持つこと」。この「目を凝らす」ことを長きに渡り繰り返してきたからこそ、ポール・スミスはポール・スミスであり続けるのだろう。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

世界70ヶ国で自身のブランドを展開しようと、名だたるブランドやクリエーターとのコラボにおいても、いつも彼は自分の心に問いかけ、「YES」「NO」を判断できる眼差しを持ち続けていることを、この展覧会に集った2,800点余の作品は雄弁に語っている。

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH
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「京都国立近代美術館」での展覧会は7月18日まで開催されているが、その後、7月27日から8月23日まで東京会場である「上野の森美術館」で、そして、9月11日から10月16日までは名古屋会場である「松坂屋美術館」で巡回開催されることになっている。

チョイとポールの感性に触れてみよう!

HELLO, MY NAME IS PAUL SMITH

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