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2016 Jul. 13

Porsche 911R

今年の3月に登場したのが、ポルシェが991台限定で発売した「911」限定モデル「911R」。外見は「911カレラ」から大きな変化がないが、中身には「911GT3 RS」譲りの4リッター6気筒エンジンに始まり、カーボンブレーキや後輪操舵の標準採用、リアシートの削除やサイドウィンドウのポリカーボネート化などの軽量化まで、徹底的にパフォーマンスが追及された1台。

Porsche 911R

「ポルシェ」という名を耳にしたときに思い浮かぶ姿は、「ボクスター」や「ケイマン」ではなく、やっぱり「911」である。

しかし、最近のベストセラーモデルは「cayenne/カイエン」であり、昨今の収益の過半を占めるのは、「スポーツカーではなくSUV」という現実が、昔からの「911」ファンには少々寂しい話である。

porsche cayenne
porsche cayenne

ただ、ラインナップに属する全てのモデルがすべからく「911」をリスペクトし、そのDNAを色濃く継承しようという姿勢を明確にしていることは間違いない。例えば発表なったばかりの新型「パナメーラ」のルックスが、「これまでのモデル以上に911の雰囲気を強く受け継いでいる」ことなどからも明らかだ。

porsche panamera
porsche panamera

初代モデルの誕生以来、すでに半世紀以上の時を歩み、そうした時間の経過とともに進化を遂げてきた最新のバージョンは、今でも最新・最高峰の一級スポーツカーとして世界の市場で認められている。そんな「911」シリーズのなかにあっても、ある意味「究極の1台」というべき存在なのが「911R」というモデルである。

車名末尾の「R」の文字は、基本的には「Racing」に由来をした頭文字である。しかし、このモデルの場合、そこには「Reduce」「Refine」、そして、「Rare」という3つの意味が込められているという。

911R
911R
911R

これまでのホッテストモデル「911GT3 RS」をベースに、そこから譲り受けたカーボン(CFRP)製のフロントフードやフロントフェンダー、マグネシウム製ルーフやリア/リアサイドの樹脂(ポリカーボネート)製のウインドウなど、最先端技術を用いた軽量素材をふんだんに採用。

そんな「材料置換」による軽量化を行うことができる背景には、通常用いられるものに対して大幅なコストアップが避けられない材料を、ためらうことなく使用されることが許されるという理由も大きいことは間違いない。加えれば、「GT3 RS」比でマイナス50kgとさらなる軽量化を実現できたのは、「ケースは7段PDKと同じでも、内部は専用設計」という6段MTの採用も大きな要因。

911R
911R

セラミック コンポジット ブレーキ「PCCB」やトルク ベクタリング メカ付きのLSDなど、走りにまつわるハイテクアイテムを標準装備するのは、誰もが納得できる点である。一方で、かくも徹底した軽量化にフォーカスをしながら、リアのアクティブ ステアリング システムまでを標準化した点には疑問を抱く人もいるかも知れない。

911R

位相反転式の電子制御によるこのシステムは、複雑な構造ゆえ相応の重量増を免れない。実際、システム重量はおよそ7kg。リアシートを取り払い、窓を樹脂化までして軽量化に勤しんだモデルにとって、これは「忸怩(じくじ)たる重さ」とさえ言っていい。

こうして、せっかくの軽量化効果が相殺されてしまうことを承知の上で、敢えてリアのアクティブ ステアリング システムを採用した理由は、「そうまでしてでも使う価値があると判断したから」というのがポルシェの回答。

911R

カレラ系よりも幅広のワイドボディに、「GT3 RS」に先行搭載された最高出力500psを発する4リッターの自然吸気エンジンを搭載。さらには、PCCBやリアのアクティブ ステアリング システム等々、採用するメカニカル コンポーネンツとしては、すでにGT3系で培われたアイテムをフル搭載する「911R」。しかし、意外なことに、このモデルは「サーキット走行にはフォーカスをしていない」とも言い切るのが興味深い点でもある。

昨今、ポルシェがニューモデルのローンチ時に好んで発表をするニュルブルクリンク旧コースでのラップタイムも、このモデルでは計測をしていないと言う。GT3系ではアイコン的存在である巨大な固定式のリアウイングも、「あれは高速でのスタビリティを稼いでサーキットでのラップタイムを短縮するのが目的で、オンロードでの俊敏性を重視する911Rには必要のないもの」と、説明する。

911R

リアのアクティブ ステアリング システムを残したのも、この「俊敏性」というポイントに重きを置いた結果という。

ある意味、「可変ホイールベース機構」としての効果を持つこのメカニズムには、GT3系とは異なった専用のチューニングが施される。それは、走行状況によって様々に変わるため、ひと口に「速度が何km/hではどう作動する」とは説明できないとのこと。いずれにしても、これこそが「究極のドライビング プレジャー」の実現に、大きな役割を果たしているという判断のようだ。

911R

軽量化のため、カーボンファイバー製の骨格を用いた彫りの深いバケットシートが装着され、リアシートは省略をされているものの、ロールケージが張り巡らされているわけでもなく、また、オプションアイテムにはナビゲーション システムが装着されているものもあり、インテリアは「至って普通の911」という風情が漂う仕上がりが、イケてるクルマの存在感を示す。

911R
911R
911R
911R
911R

ただし、そんな雰囲気を一変させるのは、911シリーズの流儀通りダッシュボードのドアサイドにレイアウトされたシリンダーに差し込まれたキーを捻り、エンジンに火を入れる瞬間。

911R

遮音材が省略されたことに加え、レスポンス重視のため採用されたシングル マス フライホイールが増幅させるベアリング音が、そもそものエンジン音に加わってキャビン内に充満。結果、アイドリング状態にもかかわらず、GT3系を凌ぐほどのコンペティティブな世界観がそこには演出される。

もっとも、いざスタートをしようとクラッチペダルを踏み込むと、踏力やストローク感はカレラ系と変わらない印象。この時点ではベアリング音も消えるので、キャビン内は平和さを取り戻すことになる。

911R

さらに、ちょっと硬めだが短いストロークで1速ギアを選択して、慎重にクラッチペダルを繋ごうとすると、4リッターという大排気量ユニットが発するトルクはすでにアイドリング時でもそれなりで、アクセルペダルを踏み込むまでもなく、「911R」のボディはスルスルと、何の神経質さもなくスタートを切ることになる。

911R

その後、速度が増すにつれ、パチパチと路面の小石などを拾う音が盛大に耳に届くのは、これもまた軽量化のために通常であれば装着をされるフェンダー内部のインナー ライナーが省略されているゆえの仕業。

一方で、同時に驚かされるのがそのコンフォート性の高さ。フロントが35%、リアが30%という偏平率の20インチの硬派なハイグリップ タイヤ(ミシュラン「パイロット カップ2」)を履くにも関わらず、走行中でもメモ書きが可能なほどのフラットさが確保されるのは、もはや「驚くほどの快適さ」とコメントをするしかない出来栄え。

911R

同時に、「ドライバーの一挙手一投足がそのまま増幅も減衰もされず、クルマの動きとしてダイレクトに反映される」と、そんなフレーズがピッタリの挙動こそは、このモデルの真骨頂であり、ポルシェの面目躍如。

もちろん、「GT3 RS」譲りの心臓が、100%ドライバーの意志に従って操作をされるMTを介して生み出す動力性能は、「強力無比」であり、「官能的そのもの」という印象がドライバーに伝わってくる。

911R

本来は、回転数が高まるにつれてフリクションが悪さをするはずなのに、むしろ、5,000rpmを超える付近から、パワー感もサウンドもよりシャープさを増していく感覚も、このモデルならではの貴重な財産。アクセルオンでのレスポンスとともに、オフ時の回転落ちがすこぶる鋭いことも、「911R」の心臓ならではの特徴。

確かに、絶対的な加速力では、シフト時のロスが皆無な2ペダル仕様にかなうはずはない。サーキットのラップタイムでは、巨大な羽根でボディを無理矢理路面に押さえつけるGT3系の後塵を浴びるのも確かだろう。

911R

しかし、シフトやクラッチミート時のミスがそのまま挙動に反映されるという、常識的に考えれば「ネガティブな点」も含め、生身の人間が操っている感がより色濃く味わえるのは、「911R」の方であるというのは疑いのない事実。

「911R」を限定販売にすることはなく、レギュラー商品として販売してほしいと願うポルシェファンはきっと多いはず。気になる価格は2,629万円とのこと。

911R

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