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2013.May. 20
レクサスブランド

レクサスは、1989年よりアメリカ国内で展開が開始されたトヨタの高級車ブランド。日本の自動車メーカーによる高級車ブランドとしては、1986年よりホンダの「アキュラ」、トヨタと同時期から日産の「インフィニティ」が北米市場を中心に展開した。

それまでの北米では、重厚で威厳を放つ高級車こそがアメリカンドリームを勝ち得た「勝者のシンボル」であった。マーケットはキャデラックやリンカーンなどの限られた伝統的ブランドが寡占しており、たとえ燃費が悪く故障しやすくとも名門ブランドの名のもとに許容されていた感が否めない。

マーケットはキャデラックやリンカーンなどの限られた伝統的ブランドが寡占

しかし、そうしたメーカー都合の販売姿勢に対し、顧客の潜在的な不満は極めて高く、社会的成功を誇示するかのような威圧的なデザインの旧来の高級車を避ける傾向は富裕層の中にも確実に存在し、名門とされてきたブランドも若年層にとっては「古臭い」と見えていることを、市場調査を進めていたトヨタは掴んでいた。

そこでレクサスでは、伝統や威厳を前提とした旧来の高級車のあり方を否定し、極めて「機能的」で「高品質」なプレミアムを模索した。すなわち、ベンツやBMWなどのドイツ製高級車に匹敵する品質や安全性と、日本車ならではの「信頼性」や「経済性」とを両立させ、それでもなおリーズナブルな価格設定で、そして、最高の接客とアフターフォローをもって、新たな高みを目指した。

当時はまだ「壊れないが、あくまで安物の大衆車」とのイメージが強かった日本車に、日本国外の高級車市場への参入余地はないというのが自動車業界の定説だった。しかし、トヨタは新たなテストコースの建設を始めとした従来を大きく超える開発体制・品質基準を策定し、「Impressive(印象的)」「Dynamic(動的)」「Elegant(優雅)」「Advanced(先進)」「Lasting(普遍価値)」の5つの開発キーワード「I.D.E.A.L.(アイディアル)」と、「The Relentless Pursuit of Perfection(完璧への飽くなき追求)」をスローガンに、約5年間にも及ぶ長い開発期間を経た後、1989年に満を持して初代「LS」を発売した。

1989年に満を持して初代「LS」を発売した

トヨタの目論見通り、レクサスが掲げるコンセプトは好評をもって迎えられ、大衆車メーカーによる高級車市場参入の成功例となった。特に、欧州車を凌駕する静粛性と内外装の組上げ精度は、ベンツやBMWなどの伝統高級車メーカーにも大きな衝撃を与えたという。

1989年のブランド設立以来、レクサスは主に北米の高級車マーケットにおいて一定の地位を築いたが、ヨーロッパなどではベンツやBMWといった伝統的欧州車が寡占するマーケットで苦戦を強いられたほか、日本でも根強い舶来品信仰の影響もあり、高級車マーケットの中心は依然として欧州車の独壇場に変化はなかった。

日本において、当初は国内外でのユーザー趣向の違い等の理由から日本国内でのレクサスブランド展開予定はなく、海外でレクサスブランドで販売される車種は日本向けに仕様変更やグレードの見直しをしたうえで、トヨタブランドから別名称で販売されていたが、「いざなみ景気」と呼ばれる景気回復期に差し掛かりつつあった経済情勢も受け、日本国内でもレクサスブランドを展開することが2003年2月にトヨタから正式発表された。

レクサスブランドを展開することが2003年2月にトヨタから正式発表された

デザイン基本理念「L-finesse(エルフィネス)」といったブランド再定義・再構築が行われ、全世界で通用する日本発の高級車ブランドとして新生「レクサス」を展開し、今後の経済成長が見込まれるアジア圏ほかを含めたさらなる成長を目指すこととなった。そして、2005年の日本でのレクサスブランド展開開始以後は、順次レクサスブランドの全世界統一名称・品質基準へ変更のうえ、レクサス販売店での取扱いに変更されている。

「L-finesse」は、従来のトヨタのデザイン基本理念である「j-factor(全世界に受け入れられる日本独創のデザイン)」というキーワードに基づくレクサス独自のデザイン基本理念である。「L」は「Leading edge=先鋭」、「finesse」は「人間の感性や巧みの技の精妙」を意味し、もてなしの心につながる時間軸の表現を表す「予」、明快な主張を表す「純」、面や線の変化で生まれる味わいと深みを表す「妙」で成立する、日本らしさを体現させるものとされた。

このように「L-finesse」は抽象的な理念であり、特に全車種共通のデザインアイコンなどは設定されなかったが、日本の伝統的な美の特徴は、華美な装飾要素を取り除いていって何事もシンプルにすることとの解釈に立ち、レクサスには他の高級車ブランドのような威圧感ではなく、知的で先進的なステータスを与えたいという考えは明確にされており、各車種ごとの個性の中でこの考えを順守する方針でデザインされた。

その後、「L-finesse」に対して「いろいろ説明をしなければ理解できないような非常にわかりにくい訴求」との反省があり、レクサスのデザインには「高級車らしい押し出し感が弱い」「特徴がなく退屈」「トヨタブランド車との違いが分かりにくい」等の批評がついて回ったことから、BMWの「キドニーグリル」やアウディの「シングルフレームグリル」のように個性的で一目でレクサスと分かるような全車種共通のデザインアイコンを導入する方針への転換が図られた。

BMWの「キドニーグリル」

そこで、逆台形のアッパーグリルと台形のロアグリルを繋げた「スピンドル形状(スピンドルとは紡績機の糸を巻き取る軸(紡錘)の意)」のフロントマスクをベースとし、更に存在感を強めたデザインにリファインされた「スピンドルグリル」が2012年発売の4代目「GS」から採用され、以後に発売される他車種にも順次展開されている。これまでのトヨタは万人受けを狙い「批判もされなければ肯定もされない」クルマを作り続けてきた。だが、高級車市場においては埋没すると判断し、一目でブランドが認識できるよう「スピンドルグリル」がレクサス全6モデルに採用され、力強さを表現。「賛否両論だが、これこそが狙い」と説明する。今後、トヨタの大胆な試みが高級車のイメージを変えるかどうかは注目されるところだ。

スピンドルグリル

「MADE IN JAPAN」として、アメリカや欧州メーカーなどを圧倒する品質を武器に新たなプレミアムブランドとして1989年に北米で産声を上げたレクサスは、伝統やラグジュアリーに飽き足らない富裕層から支持を得て、1999年から13年連続で米国高級車市場でトップシェアを確立してきた。しかし、東日本大震災で供給不足となる間に、ベンツやBMWの欧州車ブランドに抜かれ、2012年には3位に転落した。

また、欧州メーカーには1800年代後半〜1900年代初頭から車作りをしてきた「歴史」「伝統」がある。さらに欧州にはF1を始めとしたレースなどの自動車文化も根付いている。それらを武器とするベンツやBMWとの熾烈な競争で優位性が薄れてきているのも事実。

伝統で確立されたブランドに対抗する「ストーリー」を持たせるべく、さまざまなイメージ戦略を手がける必要があるとトヨタも必死だ。「レクサスに足りないものは歴史とストーリー」と痛感したトヨタは4月から、豊田章男社長がレクサス事業を直轄し、ブランドの立て直しに乗り出した。レーサーとしての顔や、「豊田家」という創業家の顔を併せ持つ同氏が事業を直轄すれば、ブランドストーリー作りに役立つとの判断からのようだ。

先日、レクサスの新型車「IS」の発表披露会が開催された。場所は千葉県浦安市の倉庫で普段は航空機の格納庫として使われる場所。流行を指南するファッション誌の編集者やファッションモデルなど、高級ファッションブランドの新作発表会と見間違う会場に集まった約300人は、DJが選曲し、アレンジした音楽を聴きながら新レクサスを眺めた。

レクサスの新型車「IS」
レクサスの新型車「IS」
レクサスの新型車「IS」
レクサスの新型車「IS」

今回フルモデルチェンジされた「IS350」/「IS250」に、新たにハイブリッドモデル「IS300h」が追加された。今回のフルモデルチェンジでは、レクサスのデザインアイコンである「スピンドルグリル」を起点として力強さとスポーティさが表現されたエクステリア。インテリアは操作性を配慮し、「IS」ならではのスポーツ性に満ちたスタイリングとしたほか、ホイールベースを70mm伸ばし、シートデザインを改良することによりリアシートのニー・スペースを先代から85mm拡大した。

エンジンには、従来のV型6気筒2.5リッター「4GR-FSE」とV型6気筒3.5リッター「2GR-FSE」に加え、新たに直列4気筒2.5リッター「2AR-FSE」を追加、ハイブリッド車「IS300h」ではFR用縦置き2.5リッター直列4気筒アトキンソンサイクル・エンジンにモーターを組み合わせる。

なお、「IS300h」は、レクサスのアイデンティティである「先進性」の具現化を目指し、スポーツセダンに不可欠な高い動力性能と快適性の両立に加え、燃費性能においてもJCO8モード走行燃費23.2km/L、CO2排出量:100g/kmを達成している。ボディ剛性が向上し、新型のリヤサスペンションやトランスミッションが採用され、優れた操縦性・走行安定性を実現する。ちなみに、価格は420万円〜595万円。

トヨタがこうした披露会を行うのは珍しいが、「長期的にブランドを育てていくための一環」との説明。今後、レクサスの世界統一広告キャンペーンを実施するなど、ブランド発信を強化する。また、ブランドのロゴは、年内に全世界で金色から白金色に統一。従来の豪華さだけでなく、先進性や洗練された印象を打ち出していく。

そして、カフェや催事場のある大型拠点を、東京の青山やニューヨーク、UAEのドバイに設置。最先端の服飾や芸術関連の催しを開催し、ブランドの個性を訴える。

余談ながら、その発表会で「IS」に注目を浴びたのがレクサスの自転車。レクサスブランドの自転車は2009年の東京モーターショーでお披露目されたのだが、まったくといっていいほど自転車マニアには見向きもされなかった過去がある。

レクサスブランドの自転車は2009年の東京モーターショーでお披露目されたのだが、まったくといっていいほど自転車マニアには見向きもされなかった過去がある

今回はその反省を踏まえ、デザイン優先ではなく、自転車マニアが憧れるような本格的なものをつくろうという意気込みで開発されたそうで、そのまま自転車レースに出ても遜色ない代物の仕上がっている。

フレームはレクサス「LFA」のボディに使われた「CFRP(カーボンファイバー強化プラスチック)」を使用。そして、要の変速機はシマノ製の最新電動変速機が使われている。それだけでもン十万円もするという。もちろん、その製作に当たってはレクサス同様に匠の技がふんだんに盛り込まれている。

自転車マニアが憧れるような本格的なものをつくろうという意気込みで開発
色は白と黒の2種類

今後は、国内のレクサス店41店舗で展示する予定。希望者がいれば販売もする方針で、価格は100万円。色は白と黒の2種類。ある意味、新型「IS」より目立っていたかも知れない。飾っておくだけでもカッコいい自転車であることは間違いない。

 
IS Driving Movie

 
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