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2013.May. 2
ハイメ・アジョン

デンマーク語で「静けさ」を意味する「Ro(ロオ)」と名付けられたチェアは、日々の喧噪から離れ自分自身へと戻る時間や空間、静かに考え瞑想する機会をもたらす家具を作りたいという思いから誕生。「フリッツ・ハンセン」社とともに開発に取り組んだデザイナーのハイメ・アジョン(Jaime Hayon)が創りだしたラウンジチェアだ。

デンマーク語で「静けさ」を意味する「Ro(ロオ)」と名付けられたチェア

ハイメ・アジョンは、1974年にマドリッド生まれた国際的に活躍する若手デザイナーの1人。10代の頃は、スケートボートやグラフィティ・アートに熱中し、彼独特の大胆で個性的なスタイルを確立。その後、工業デザインをマドリッドとパリで学び、1997年に「ベネトン」のコミュニケーション・リサーチ・センターである「ファブリカ」に参画。ベネトンの広告でも有名な写真家であり、イメージメーカーでもあるオリビエーロ・トスカーニ氏らと共に仕事をし、学生の立場ながらデザイン責任者に抜擢され、店舗からレストラン、展覧会やグラフィックなど、多岐に渡るプロジェクトの指揮を執った。

8年後、デザイナーズトイや陶磁器、家具のコレクションの展覧会をロンドンのデヴィット・ギル・ギャラリーで開催し、サーカスの影響を受けたような彼の世界観や「地中海のデジタル・バロック」と呼ばれる創造性が大きく開花した。その後、コレクションをきっかけに、アート、デザイン、工芸など、様々な分野においてボーダーレスに活躍するクリエイターとしてハイメ・アジョンの名前は広く知られることになった。

ハイメ・アジョン

「アート・キテクト社」からバスルームコレクションを、「エスタブリッシュド&サンズ」「BD バルセロナ・デザイン」「モーイ」 から家具を、「メタルアルテ」「スワロフスキー」から照明を、「バーンハート・デザイン」からテキスタイルを、「ハイパー・エドシック」 からシャンパンバスケットを、「ガイア&ジーノ」 からは花瓶を、「ボーザ・チェラミケ」 からはオブジェを、「ビザッツァ」からはタイル等を次々と発表する。

彼の代表的なプロジェクトとしては、「バカラ」から壺や照明を発表し、有名なクリスタルブランドに陶器やプラスティックの素材をミックスするという画期的な試みを行った。また、2006年から現在もスペインの磁器ブランド「リヤドロ」のアートアドバイザーを務めており、自身のコレクション「ザ・ファンタジー」を発表すると共に、ブランドのアートディレクターとして活動している、現在、世界中のブランドから引っ張りだこの人気デザイナーだ。

バカラ
バカラ

余談ながら、石川県の伝統工芸「九谷焼」とアジョンのコラボによるテーブルウェア「上出長右衛門窯×Jaime Hayon Produced by 丸若屋」は話題を呼んだ。コラボについて、伝統を受け継ぎながら進化することが大事であり、革命を起こすことではないと彼は言う。自分のデザインを活かしながら、九谷焼らしさも実現するために細かい部分まで把握する努力を重ね、九谷焼の技術を理解した。そして、コラボによって伝統工芸の良さを多くの人に知ってもらい、進化させることにより今後も伝統が続いていくようにしたいというのがアジョンの信念である。

石川県の伝統工芸「九谷焼」とアジョンのコラボによるテーブルウェア「上出長右衛門窯×Jaime Hayon Produced by 丸若屋」は話題を呼んだ
アジョンのコラボによるテーブルウェア

「フリッツ・ハンセン」社が、「Ro」のプロジェクトでハイメ・アジョンに求めたものは「快適な一人掛けの椅子」。アジョンは、人の身体にインスピレーションを受けたこの椅子のフォルムを得るために、ひじょうに長い時間をかけた。快適さと美しさの両方を求め、思考と心地良さをサポートするほっそりとしたエレガントな椅子をつくることを目的とした。

ハイメ・アジョンに求めたものは「快適な一人掛けの椅子」

「Ro」のゆとりある1.5シーターの座面は、本やパソコンやタブレット、新聞を手にしての寛ぎと快適なひと時を創り出し、子どもと一緒に腰掛ければ、新たなやすらぎの空間にもなり得る。また、シンプルでありながらもエレガントな包み込むようなシェル型のフォルムで、視覚的にも機能的にも静けさを約束するデザイン仕上がっている。プライベートな時間とコミュニケーションの時間、どちらの用途も可能にする心地よいラウンジチェアだ。

「Ro」はトラディショナルカラー(ブラック、グレー、トープ)、ブライトカラー(バイオレット、ブルー、イエロー)、ソフトカラー(ライトピンク、セージグリーン、サンド)の3タイプ計9色のカラーバリエーションで展開。椅子のシェル部には座面と背もたれのクッションとは異なるテクスチャーの張り地が使用され、それぞれの張り地がシェルのハードな印象とシェル内側の温かみあるソフトな印象のコントラストを際立たせる。ちなみに、2013年秋頃から取り扱い開始の予定となっており、価格は27万円で予定されている。

プライベートな時間とコミュニケーションの時間、どちらの用途も可能にする心地よいラウンジチェア

また、2011年に「フリッツ・ハンセン」社が発表したハイメ・アジョンのデザインによるソファ「FAVN」は、デンマーク語で「抱擁」の意味。外側は堅く、内側は包み込むように優しいシェルが座る人を包み込むようなオーガニックなデザイン。「エッグチェア」や「スワンチェア」のように、どの角度から見ても美しいという「アルネ・ヤコブセン」のデザインの息吹を受け継いでいると言えるチェアである。

ハイメ・アジョンのデザインによるソファ「FAVN」

バックからアームレストにかけての美しいカーブやチャーミングなボタンが印象的な丸みを帯びたクッション、繊細な脚部など、随所にハイメ・アジョンらしさが表現されている。ちなみに、「フリッツ・ハンセン」社のメーカーとしての姿勢に「自社のアーカイヴと共存できるデザインを」というものがあるだけに、「FAVN」は過去の名作群との相性とも抜群。

ハイメ・アジョンの個性は絶妙の色使いにも表れる。「デザイナーセレクション」と呼ばれるシリーズにはライトグレー、セージグリーン、クリアベージュ、トープ、チョコレート、マスタード、レッド、ダークブルー、バイオレット、ブラックの10色が用意されており、ソファ本体、シートと背もたれ、クッションがそれぞれ違うファブリックで張り分けられている。

バックからアームレストにかけての美しいカーブやチャーミングなボタンが印象的な丸みを帯びたクッション、繊細な脚部など、随所にハイメ・アジョンらしさが表現されている。

これまた余談ながら、ハイメ・アジョンのコラボはチョコレート界でも行われている。「ゴディバ(Godiva)」とのコラボは2012年のバレンタインに続いて2回目。昨年はパッケージのみのデザインだったが、今年のバレンタインは限定チョコレートとパッケージをデザインした。ゴディバ史上初の試みとなるコレクションのテーマは「ヴィサージュダムール(愛の顔)」。「愛の顔」が描かれた6種類のハート型チョコレートは、それぞれフルーツフレーバーのガナッシュとナッツのプラリネが二層構造になっており、思いがけない食感と味わいが印象的なチョコレート。また、恋をしているときの宙に浮くような、すべてがキラキラして見えるような気持ちがデザインされたのパッケージからストーリーが続いているようなチョコレートが好評を博した。なお、陶器製のパッケージも用意され、思い出が取っておける粋な計らいもなかなか親切。

「ゴディバ(Godiva)」とのコラボ

また、限定コレクションではフォトグラファーの蜷川実香がビジュアル撮影を担当し、グラデーションを成す赤い花々をバックに限定コレクションを写し出した。高級感が漂い、楽しい気持ちになってチョコが食べたくなるような雰囲気が見事に表現された作品となった。

フォトグラファーの蜷川実香がビジュアル撮影を担当

ハイメ・アジョン。注目のデザイナーである。


 
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